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最高裁判所第三小法廷 昭和44年(オ)654号 判決 1969年11月18日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人南利三、同駒杵素之の上告理由について。

訴外Dが上告人の被用者であり、同訴外人が被上告人との間に本件売買契約を締結し代金を受領した行為は、外形上、上告人の事業の範囲内に属するものと認められるとした原判決(その引用する第一審判決を含む。以下同じ。)の事実の認定、判断は、原判決挙示の証拠に照らして肯認することができないものではなく、その認定、判断の過程に所論の違法はない。そして、原判決の確定した事実関係によれば、Dのした右行為がその権限内において適法に行なわれたものでないことを被上告人が知らなかつたことについて、過失の責は免れないとしても、重大な過失があつたものとは未だ解しがたく、したがつて、上告人において被上告人に対し民法七一五条に基づく損害賠償義務を負うべきものとした原判決の判断は正当であり、また、原判決がその認定した被上告人の過失を斟酌して、被上告人のこうむつた損害額一八〇万円のうち九〇万円の賠償を上告人に命じた判断も是認することができ、右各判断に所論の違法はない。論旨はすべて採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 飯村義美 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 関根小郷)

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